院内教材 / v1 2026-10-06
院内のNST・病態栄養の教材です。全57問を7部構成で作っています。1つの問につき、発見編・評価提案編・設計編の3段と、さらに深い上級編を置きます(上級編はまだ準備中です)。
いま読めるのは第2部の6つです。「1枚でわかる」は要点だけの表紙で、判定は本文で行ってください。
一致する問が見つかりませんでした。別の言い方でも試してください。
なぜ栄養が効くのか
リスクのある人を拾い、低栄養かを決める
経口・経腸・静脈の選び方
リフィーディングをはじめとする合併症
周術期・重症・心不全・腎・肝・がん・嚥下
成書にもガイドラインにも書かれていない領域
ここだけ読み手が患者・家族に変わる
Q10 / 第2部 診断編
| 段階 | することは | 誰が | 出力は |
|---|---|---|---|
| ① スクリーニング | リスクのある人を拾う(感度優先) | 入院時に全員へ。看護師・事務でも回せる | リスクあり/なし |
| ② 診断(GLIM) | 低栄養かを確定し重症度を付ける | 管理栄養士・医師 | 低栄養/非低栄養+Stage |
| ③ モニタリング | 介入が効いているかを追う | NST・病棟 | 摂取量・体重・目標到達率 |
この3つを混ぜると、教材でも病棟でも事故が起きます。②だけがGLIMの範囲です。
| 表現型 ─ 1つ以上 | 病因 ─ 1つ以上 |
|---|---|
| ① 意図しない体重減少 ② 低BMI ③ 筋肉量減少 |
④ 食事摂取量減少・消化吸収障害 ⑤ 疾患負荷・炎症 |
数え上げです。点数式ではありません。閾値はQ11(表現型)・Q12(病因)・Q13(重症度)に。
Q11 / 第2部 診断編
| 表現型 | 閾値 | 備考 |
|---|---|---|
| ① 意図しない 体重減少 |
>5% / 6か月以内 >10% / 6か月超 |
「6か月で5%」ではない。5%を超える |
| ② 低BMI (kg/m²) | Asia <18.5 (70歳未満) Asia <20 (70歳以上) |
欧州は <20 / <22。日本はAsia列 |
| ③ 筋肉量減少 (下腿周囲長) |
男性<33 cm 女性<32 cm |
DXA・BIA・CT・MRI・超音波が本来。使えないとき身体診察か周囲長。肥満補正:BMI 25–30 で −3 cm、30–40 で −7 cm |
下腿周囲長の値は GLIM 2025更新 Table 2。これは診断用の値で、重度判定用(Q13)とは別の数字です。
| 用途 | 男性 | 女性 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 筋肉量減少の診断 | <33 cm | <32 cm | GLIM 2025更新 Table 2 |
| 中等度の目安 | <30.0 cm | <29.0 cm | Maeda 2017(二次情報経由) |
| 重度判定(Q13) | <27.0 cm | <26.0 cm | 同上。JSPENが重度の例示に使用 |
同じ「下腿周囲長」で3通り。出典と用途を書かずに数字だけ出すのは禁止。浮腫・腹水がある例、麻痺側の値は使えません。
Q12 / 第2部 診断編
| 条件 | 閾値 |
|---|---|
| 摂取量が大きく落ちている | 必要量の ≤50% が 1週間超 |
| 摂取量の低下が長く続いている | 何らかの摂取減少が 2週間超 |
| 吸収できない | 吸収を妨げる慢性消化管疾患 |
ORです。「50%以下」と「2週間」をAND条件にすると、拾うべき患者が落ちます。
急性疾患・外傷による炎症/慢性疾患に関連する炎症(がん、COPD、心不全、慢性腎臓病、関節リウマチなど)
一過性の軽度炎症(GLIM 2019 Table 3 脚注e)。「急性疾患で入院していれば自動的に満たす」と読むと過剰診断になります
判断の主体は臨床判断。CRPは補助指標で、2019原典に数値のカットオフはありません。数値を使うなら「院内の決め」と明記し、出典と検査室の基準上限を併記します。
Q13 / 第2部 診断編
| Stage | 6か月以内 | 6か月超 |
|---|---|---|
| Stage 1 中等度 | 5–10% | 10–20% |
| Stage 2 重度 | >10% | >20% |
Table 4に Asia行はありません。脚注bが「アジア人集団の参照BMIにはさらなる研究が必要」と断っており、2025年の5年更新でも同じ文です。
| 指標 | 中等度 | 重度 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 低BMI (kg/m²) 70歳未満 | — | <17.0 | JSPEN例示 Maeda 2020 |
| 低BMI (kg/m²) 70歳以上 | — | <17.8 | 同上 |
| 下腿周囲長(補助) 男性 | <30.0 cm | <27.0 cm | Maeda 2017 (二次情報) |
| 下腿周囲長(補助) 女性 | <29.0 cm | <26.0 cm | 同上 |
JSPENの見解:「低BMI」と「筋肉量減少」の重度基準値は各施設の実情に応じ設定する必要がある。この序列(体重減少が主軸、BMIは次、周囲長は補助)はGLIMの規則ではなく、院内の設計です。
診断の入口。アジア人で「低BMIという表現型がある」と判定する線(70歳以上は <20)
重症度の出口。非アジア集団で「重度」と判定する線(70歳以上は <20)
日本でGLIMを回すと、BMI 18.0の患者は「低BMIあり→低栄養と診断」まで行きますが、Stage 1かStage 2かはGLIMの表では決まりません。だから院内値が必要になります。
Q14 / 第2部 診断編
必要量の 60%未満が3日以上 → 入口②「低栄養リスク」として拾う。これは拾い上げの線で、診断ではありません
必要量の 50%以下が1週間超 → GLIMの病因基準を満たす。診断に使う線です
入口②の線(60%・3日)を検証した研究は、本教材の調査範囲では確認できませんでした。根拠は「ガイドライン間の隙間を埋める運用上の設計」であり、エビデンスで決まった閾値ではありません。
GLIMは2026年に「低栄養のリスク(risk of malnutrition)」の概念定義を合意しました。体重減少の有無を問わず、摂取に影響する症状や疾患・身体・心理・社会・経済の要因を持ち、将来低栄養に至りうる動的な状態、という定義です。GLIM自身が「より予防的な低栄養へのアプローチ」を志向すると書いています。
入口②は、この方向に沿った設計です。ただし定義が出ただけで、どのツールで拾うかの推奨はまだ出ていません(早見表を参照)。
早見 / 第2部 診断編(Q9 相当)
GLIMのワーキンググループが、「低栄養のリスク」の概念定義(Part 1・専門家112名のDelphi・26文を採択)と、その操作化(Part 2・64の危険因子から29を「critically important」と判定)を公表しました。定義はこうです。
意図しない体重減少の有無にかかわらず、摂取に影響する症状、あるいは疾患・身体・心理・社会・人口統計・経済の危険因子を1つ以上持ち、低栄養に至りうる、そして臨床転帰を悪化させうる動的な状態。
Part 1は「この定義が今後のスクリーニング推奨を導く」と書いています。つまり推奨はこれからです。いまツールを選ぶのは、公式の答えを待たずに院内で決めるということで、それ自体は妥当ですが、将来見直す前提で決めるべきです。
| ツール | 位置づけ | 対象 | カットオフ | 要る実測値 |
|---|---|---|---|---|
| MST | スクリーニング | 成人急性期入院 | 2以上 でat risk (0〜5点) | 測定不要。体重減少と食欲の聴取のみ |
| MUST | スクリーニング | 成人(病院・地域) | 0 Low / 1 Medium 2以上 High | 体重・身長・体重変化・急性疾患 |
| NRS-2002 | スクリーニング | 成人入院患者 | 総点 ≥3 でリスクあり (<3は週1回再) | 体重・身長・体重変化・摂取割合・診断名・年齢 (70歳以上で+1点) |
| MNA-SF | スクリーニング | 高齢者(65歳以上) | 12–14 normal 8–11 at risk 0–7 malnourished | 体重・身長。BMIが出せなければ下腿周囲長 |
| SGA | アセスメント | 成人入院患者 | A 良好 / B 中等度 / C 高度 (点数式でない) | 体重の経過+身体診察のみ。器具不要 |
| GLIM | 診断+重症度 | 成人 | 表現型1以上 かつ病因1以上 | 体重の経過・身長・筋肉量・摂取量・炎症の臨床判断 |
JSPEN FAQが挙げるスクリーニングツール: MUST / NRS-2002 / MNA-SF / MST / PG-SGA-SF / SNAQ。
| 報告 | 集団 | GLIMとの一致 |
|---|---|---|
| Zhang 2021 Nutrition 83:111072 | がん 637例 | NRS-2002 κ 0.823 (AUC 0.896) MUST κ 0.596 / PG-SGA κ 0.453 |
| Jazinaki 2024 Nutr Clin Pract 39:1419 | 入院 290例 | 2段階法(NRS-2002→GLIM)の一致が NRS-2002単独より高い |
| van Dronkelaar 2023 Nutrients 15:5126 | 高齢入院 356例 | SNAQ・MUST・MST・MNA-SF・PG-SGA-SF κ 0.21–0.75(カットオフの取り方で変動) |
| Neelemaat 2011 J Clin Nurs 20:2144 | 入院 275例 | データ欠損 MUST 47% / MNA-SF 41% MST・SNAQ は感度・特異度 ≥70% |
| van Bokhorst 2014 Clin Nutr 33:39(SR) | 83研究・32ツール | 「一貫して良い成績のツールは無い」 |
これらは集団も対照基準も違うので、数値をツール固有の性能として一般化できません。NRS-2002の高い一致はがん患者1研究のものです。
性能比較だけでは決め切れません。ツールが違えば拾われる患者が変わります。
※NRS-2002の「食事摂取量スコア2」の範囲は 20–60% / 25–60% / 25–50% の3版が流通しており、原典で未確定です。院内で使うなら原典の版を特定してから。
※2026年のPart 1/2は抄録で確認したもので、本文は未取得です。
Q10 / 第2部 診断編 / 本文
「カルテに『GLIMで低栄養』と書くには、何をどの順で確認すればいいか。スクリーニングはGLIMに含まれるのか?」
JSPENの整理(GLIMワーキンググループ「GLIM基準について」2024年10月10日改訂版、FAQ)
| ツール | 対象 | 判定(原典の区分) |
|---|---|---|
| MUST | 成人 | 0=Low / 1=Medium / 2以上=High |
| NRS-2002 | 成人入院患者 | 総点3以上でリスクあり(3未満は週1回再スクリーニング)。70歳以上は+1点(年齢加算の原典表記は未確認) |
| MNA-SF | 高齢者 | 12〜14=normal / 8〜11=at risk / 0〜7=malnourished |
| MST | 成人急性期入院 | 2以上=at risk(体重減少と食欲の聴取のみで測定不要) |
| PG-SGA-SF ・ SNAQ | - | カットオフは今回取得できず(確認できず) |
NRS-2002は食事摂取量スコアの範囲が版により異なり(20-60% / 25-60% / 25-50%)、原典で確定できていない。各ツールの詳細はQ9。
SGAの扱い: JSPENは「SGAをスクリーニングツールとして用いることは、結果的にアセスメント(低栄養の診断)を二重に行うことになり推奨出来ません」としている(令和6年度「GLIM基準を使用するにあたってのSGAの取り扱いについて」)。
診療報酬: 栄養サポートチーム加算の対象患者要件アは、栄養管理計画を策定している患者のうち「栄養スクリーニングの結果を踏まえ、GLIM基準による栄養評価を行い、低栄養と判定された患者」(令和8年度改定)。GLIM判定の記録がなければ要件アは満たさない。
GLIM 2019(Table 3、数値は原文のまま。詳細はQ11・Q12)。策定はESPEN・ASPEN・PENSA・FELANPE。スクリーニングは "any validated screening tool"。GLIMは合意報告で、GRADE型の推奨グレードは付いていない。
| 区分 | 項目 | 原文 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 表現型 | 体重減少 | ">5% within past 6 months, or >10% beyond 6 months" | 6か月以内に5%超、または6か月を超える期間で10%超 |
| 表現型 | 低BMI | 欧州 <20(70歳未満)/ <22(70歳以上)。Asia <18.5(70歳未満)/ <20(70歳以上) | アジア人にはAsia値を使う |
| 表現型 | 筋肉量減少 | 検証済み体組成測定(DXA・BIA・CT・MRI・超音波) | 使えなければ身体診察、または上腕・下腿周囲長 |
| 病因 | 摂取量・吸収 | "≤50% of ER >1 week, or any reduction for >2 weeks, or any chronic GI condition that adversely impacts food assimilation or absorption" | ERは必要量。3つはOR |
| 病因 | 疾患負荷・炎症 | "Acute disease/injury or chronic disease-related" | CRPは補助指標。2019原典に数値カットオフは無い |
| 段階 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| スクリーニング | 病棟看護師ほか | 入力(体重・身長・摂取量)を正確に出す |
| GLIM判定・記録 | 管理栄養士・医師(Lv2の読者) | 表現型・病因を確認し、判定を記録する |
| 提案 | NST → 主治医 | 提案テンプレートv2で伝える。栄養治療の指示は主治医が出す(プロトコル5-4) |
---
Q11 / 第2部 診断編 / 本文
「GLIMの表現型は、何をどう測って、どの値から『あり』にしますか?」
GLIM 2019 Table 3 の表現型(原文のまま)。合意報告で、GRADEのような推奨グレードの表記は確認できていない。
| 表現型 | 原文 |
|---|---|
| 体重減少 | ">5% within past 6 months, or >10% beyond 6 months" |
| 低BMI(kg/m²) | 欧州: "<20 if <70 years, or <22 if ≥70 years"<br>Asia: "<18.5 if <70 years, or <20 if ≥70 years" |
| 筋肉量減少 | 検証済みの体組成測定(DXA、BIA、CT、MRI、超音波)。使えないときは身体診察、または上腕・下腿周囲長 |
筋肉量の値(GLIM 2025更新 Table 2。Europe PMC全文XML経由で確認、確度B)。単位 kg/m²、下腿周囲長のみ cm。
| 指標 | 男性 | 女性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ALMI(DXA) | <7 | <5.5 | EWGSOP2。白人集団向け |
| ASMI(DXA) | <7 | <5.4 | AWGS。アジア人向け |
| ASMI(BIA) | <7 | <5.7 | AWGS。アジア人向け |
| FFMI(BIA) | <17 | <15 | |
| 下腿周囲長(診断用) | <33 cm | <32 cm | 肥満補正あり(第5節) |
ほかにALM/体重(%) <25.7(男) / <19.4(女)、ALM/BMI(DXA) <0.827(男) / <0.518(女)。上腕周囲長のカットオフは2025更新に記載がなく、確認できず。握力・歩行速度は診断の構成要素ではない(Q16)。
2025年の5年更新で、体重減少とBMIの閾値は2019から変更なし(診断基準の表番号はTable 5に変わった)。
★Asia版BMI(<18.5 / <20)の出典は、GLIM 2019 Table 3そのもの。 AWGSなど別文書の値ではない。ただし根拠文献の引用は原典内(本文3.4節、Table 4の脚注b)に見当たらず、同じ原典が「アジア人の参照BMIには追加研究が必要」と断っている。「確立した値」ではなく「GLIMが併記しているアジア向けの値」と書く。2025更新でも同じ値。
★下腿周囲長は用途で値が違う。 診断用は男<33 cm / 女<32 cm(GLIM 2025更新)。肥満の補正は測定値から差し引く(BMI 25-30で-3 cm、BMI 30-40で-7 cm)。重度判定用の値は別物で、Q13で扱う。数字だけを貼らず、「診断用」と用途を書く。
★GLIM 2019 Table 2のEWGSOP2欄の女性値「<6」は暫定値。 personal communicationに基づく値で、EWGSOP2確定版(Age Ageing 2019)の<5.5と食い違う。2025更新で<5.5に揃った。2019の表をそのまま引かない。
★AWGSは2025年に改訂された(Chen LK, et al. Nat Aging 2025)。日本サルコペニア・フレイル学会は、今後はAWGS 2019ではなく2025を使うよう通知している(通知の原文は本章では再確認していない)。AWGS 2025の原著本文は未取得で、具体的なカットオフ値は確認できず。上の表のAWGS値(DXA、BIA)は2019由来である。AWGS 2025の値を使うときは原著で確かめる。
提案書v6の記載です(委員会承認前の案。承認後に差し替える)。
提案テンプレートv2の記入欄: 体重減少 [ ]%/[ ]か月、BMI [ ]、下腿周囲長 [ ]cm。
★必要量の分母は実体重が原則(プロトコル5-0)。補正するのは浮腫・腹水があるときとBMI 25以上のときだけ。これは必要エネルギー(kcal/kg)の計算の話で、体重減少率の分母(以前の体重)とは別である。
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Q12 / 第2部 診断編 / 本文
「病因の2項目は、何をどう確認したら『あり』にしますか? CRPは要りますか? アルブミンは使えますか?」
GLIM 2019 Table 3 の病因(原文のまま)。 合意報告で、推奨グレードの表記は確認できていない。2025年の5年更新でも、基準は大きく変わっていない(原文は largely unchanged)。
| 病因 | 原文 |
|---|---|
| ④ 摂取・吸収 | "≤50% of ER >1 week, or any reduction for >2 weeks, or any chronic GI condition that adversely impacts food assimilation or absorption" (ER=energy requirements) |
| ⑤ 炎症 | "Acute disease/injury or chronic disease-related" |
GLIM 2025更新 Table 3(炎症の評価ガイダンス7声明)の要点:
診断の除外には5つの基準すべての評価が要る(2025更新)。評価できない基準があるまま「低栄養なし」にしない。
v6は⑤を「急性疾患で入院している患者はほぼ自動的に満たす」と書いていた。原典は声明1で「満たしうる」と書き、脚注eで一過性の軽度炎症を除いている。広いままだと予定手術や軽症の一過性疾患の入院患者まで⑤を満たし、低栄養を過剰診断する。①加算要件アの判定が緩み、院内の有病率データが歪む。②原典に明記がある箇所なので、外部監査で指摘される。
満たすのは、重症感染・熱傷・外傷、敗血症、COPD・クローン病の増悪、慢性疾患(がん・心不全など)。満たさないのは、一過性の軽度炎症と、炎症が明らかでない病態(嚥下障害のみなど。これは④で拾う)。予定手術後の通常経過や軽症の急性疾患は、原典に明示がなく確認できず、臨床判断で決めて根拠を記録する。
Blaauw R, et al. JPEN 2026 / Keller H, et al. Clin Nutr 2026は、④の比較対象を「必要量」ではなく「通常摂取量」にする案を示した。正式改訂として採用済みかは確認できず(抄録のみ)。それまでは必要量で運用する。
GLIM 2019本文3.7は、炎症の「補助的な代替指標」としてCRP・アルブミン・プレアルブミンを挙げた(カットオフなし)。2025更新は「低アルブミン血症を低栄養の指標にすることに反対」と明記し、炎症の確認で名指しする検査はCRPだけである。古い資料の「アルブミンが低い=低栄養」は使わない。
ASPEN 2021ポジションペーパー(グレードのない学会見解)の結論部:
"The concepts of malnutrition and nutrition risk are distinct concepts that are often inappropriately interchanged in application."
★実務で最も効くのは次の一文である。
"are not useful monitoring parameters to guide nutrition support therapy"
ラウンドでアルブミンの推移を見て「改善」「悪化」と判定するのは、これに反する。 同論文は、回復が「炎症の消退、栄養リスクの低下、同化期への移行」を示しうるとも述べる。上がっても、栄養療法が効いた証拠にならない。 見るのは摂取量(目標到達率)、体重、筋肉量、CRP(炎症の勢い)。
提案書v6 5-1の記載です(委員会承認前の案。承認後に確定)。
食欲不振の原因評価(8項目)。 ④の患者の提案に使う。未確認は「未」。薬剤性 / 口腔 / 消化管 / 疼痛 / 精神・認知 / 味覚・亜鉛 / 食事内容・形態 / 食事環境
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Q13 / 第2部 診断編 / 本文
「6か月で12%減ったらStage 1か2か?」「体重減少が不明なときは?」「BMI 18.0はStage 2では?」
GLIM 2019 Table 4(原文のまま)
| 体重減少 | 低BMI(kg/m²) | 筋肉量 | |
|---|---|---|---|
| Stage 1 | 5-10% within the past 6 mo, or 10-20% beyond 6 mo | <20 if <70 yr, <22 if ≥70 yr | Mild to moderate deficit |
| Stage 2 | >10% within the past 6 mo, or >20% beyond 6 mo | <18.5 if <70 yr, <20 if ≥70 yr | Severe deficit |
病因の列は無い。Asia行は無い(脚注b: アジア人のBMI参照値にはさらなる研究が必要)。2025年更新でも同じ[確度B]。ESPEN・ASPEN: 確認できず。
5-1. 同じ数値が違う意味で2回出る(最大の落とし穴)
| 数値 | 出どころ | 意味 |
|---|---|---|
| <18.5(70歳未満) / <20(70歳以上) | Table 3 Asia | 低BMIがある(診断の入口) |
| 同じ | Table 4 Stage 2 | 重度(出口。非アジアの線) |
BMI 18.0は低BMIありだが、「<18.5だからStage 2」は誤り。出口でアジア人に使えるのは体重減少だけ。
5-2. 下腿周囲長は用途で3通り
| 値 | 出典 | 判定 |
|---|---|---|
| 男<33 / 女<32 cm | GLIM 2025更新 | 筋肉量減少の診断 |
| 重度 男27.0 / 女26.0 cm | JSPEN実施例 | 重症度(院内値) |
| 男29.8 / 女28.2 cm | Ishida 2025 | 研究値(→Lv3) |
5-3. 境界値: ちょうど5%・10%、6か月ちょうどの扱いは原典に明示なし(確認できず)。
5-4. ★弱点: 主軸が最もあやふやな情報に乗る。 過去の実測体重がある患者は少なく、多くは本人の申告か家族の記憶。基準時点の体重が曖昧なら率が動き、Stageが変わる。BMIも身長の申告に乗る。申告のずれの一般論は出典を取得できておらず、書かない。代案はない(下腿周囲長は浮腫で使えない)。→ 設計は変えず、数字の出どころを記録する。
| 優先 | 項目 | Stage 1 | Stage 2 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| ① 主軸 | 体重減少 | 5-10% / 6か月以内、or 10-20% / 6か月超 | >10% / 6か月以内、or >20% / 6か月超 | Table 4 |
| ② 不明例のみ | 低BMI | 診断を満たし重度未満 | <17.0(70歳未満) / <17.8(70歳以上) | Maeda 2020 |
| ③ 補助 | 下腿周囲長 | 男<30.0 / 女<29.0 cm | 男27.0 / 女26.0 cm※ | Maeda 2017 |
※実施例の表は「<27.0」「<26.0」と印字。院内の不等号は未決定。BMIの70歳区切りはMaeda 2020の抄録に明記なし(Lv3)。
主軸の理由(→Lv3): アジア人に示されるのは体重減少だけ、BMI主軸だと5-1で混同する、測定が1種類。体重減少以外はGLIM原典の値ではなく院内値で、記録にも明示する。
架空例(78歳、女性、現体重43.0 kg、BMI 17.4): 家族が「半年前は50 kg」と言う → 14%減でStage 2。基準が46 kgなら6.5%でStage 1。4 kgの違いで結論が変わるので出どころが要る。基準が不明ならBMI 17.4(<17.8)でStage 2。
提案テンプレートv2に、この欄は現行版に無い(追加は提案中)。
Lv1は以前の体重を聞いて出どころと記録し、下腿周囲長を測って管理栄養士/NSTに伝える。管理栄養士 + NSTがStageを判定し、根拠と出どころを記録して主治医へ提案する。採否は主治医で、却下は正式な選択肢。
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Q14 / 第2部 診断編 / 本文
「GLIM陰性だけど、食べられていない。NSTとして拾うべきか。拾うなら何をして、何を主治医に提案するのか。」
加算の対象患者(令和8年度改定)。 栄養サポートチーム加算(A233-2)の対象は、栄養管理計画を策定している患者のうち、次のいずれかです(令和8年3月5日 保医発0305第6号 別添1。一次情報)。
| 類型 | 要件 | GLIM判定 |
|---|---|---|
| ア | 栄養スクリーニングの結果を踏まえGLIM基準による栄養評価を行い、低栄養と判定された患者 | 必要 |
| イ | 経口摂取又は経腸栄養への移行を目的として、現に静脈栄養法を実施している患者 | 不要 |
| ウ | 経口摂取への移行を目的として、現に経腸栄養法を実施している患者 | 不要 |
| エ | 栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者 | 不要 |
アだけがGLIM判定を要する。 「GLIM陰性だから算定できない」は誤解です。なお、令和6年度改定の通知は令和8年5月31日で廃止されており、古い資料の「令和6年度改定」の記載は読み替えが要ります。
GLIMとスクリーニングの関係。 日本栄養治療学会(JSPEN)のGLIMワーキンググループは、全対象者に検証済みスクリーニングツールを使い、「栄養リスクあり」と判定された症例にGLIMで診断する、という2段階で説明しています。JSPENのFAQが挙げるツールは MUST・NRS-2002・MNA-SF・MST・PG-SGA-SF・SNAQ です。JSPENはSGAをスクリーニングに使うことを推奨していません(診断を二重に行うことになるため)。
確認できず。 成書・国内GLで「GLIM陰性かつ摂取量が低下している患者」の扱いを直接定めた記載は、本教材の調査範囲では確認できませんでした。
ASPEN 2021 ポジションペーパー(Evans DC, et al.)。 内臓蛋白(アルブミン・プレアルブミン)は炎症を反映する指標であり、栄養リスクと関連する。そのうえで、"malnutrition and nutrition risk are distinct concepts" と述べ、この2つが現場で不適切に交換されていると指摘しています(推奨グレードのない学会見解)。
| 意味 | 当院での扱い | |
|---|---|---|
| 低栄養(malnutrition) | GLIMで診断する状態 | 入口① |
| 栄養リスク(nutrition risk) | 予後が悪くなる可能性 | 入口②の考え方に対応 |
したがって GLIM陰性は「栄養リスクもない」を意味しません。 この区別が、入口を2本にする理論的な根拠です。
GLIM原典(2019)と5年更新(2025)。 原典は、スクリーニングに「検証済みの任意のツール」を使うとし、特定のツールを指定していません。食事摂取の病因基準は「必要量の50%以下が1週間を超える、または何らかの摂取減少が2週間を超える、または吸収を妨げる慢性消化管疾患」です。2025年の5年更新は、スクリーニングツールの選択で低栄養の有病率が変わることを明記し、「risk of malnutrition」の合意定義がなく、GLIMの中でスクリーニングをどう位置づけるかを検討中としています。2026年に概念定義のDelphiが公表されましたが、特定のスクリーニングツールを指定する内容かどうかは確認できていません。
ESPEN 病院栄養ガイドライン 2021(Bischoff SC, et al.)。 推奨56は、栄養リスクのある患者で、食事摂取がエネルギー必要量の50%以下の状態が入院中に3日続いたら栄養介入の契機とする、というものです(推奨グレードB・strong consensus 94.1%)。推奨55は、食事摂取を半定量的な方法で、栄養リスクのある患者や低栄養の患者では毎日モニタリングするとしています(グレードB・strong consensus 96.1%)。同ガイドライン自身が、56推奨のうち30は文献上のエビデンスに基づかず、外挿または専門家の知見に基づくと述べています。
GLIMを対照にしたとき、スクリーニングツールは同じ患者を拾いません。
| 報告 | 集団 | 結果 |
|---|---|---|
| van Dronkelaar C, et al. Nutrients 2023;15(24):5126 | 高齢入院356例(年齢中央値70歳) | SNAQ・MUST・MST・MNA-SF・PG-SGA-SFを比較。conservativeカットオフで感度32〜68%・特異度61〜98%・kappa 0.21〜0.59。liberalで感度66〜89%・特異度46〜95%・kappa 0.33〜0.75 |
| van Bokhorst-de van der Schueren MAE, et al. Clin Nutr 2014;33:39-58 | 83研究・32ツールの系統的レビュー | "None of the tools performed consistently well" |
| Allard JP, et al. Clin Nutr 2020;39(9):2771-2777 | カナダ18病院・784例 | SGAを対照にGLIMを評価。全組み合わせで感度61.30%・特異度89.77%。個別の2基準の組み合わせは特異度が高い一方、感度が許容できないほど低く、低栄養患者を見逃すと結論 |
→ 単一のツール・基準では完全には拾えない。だから入口を2本にする。
⭐これらの数値を「ツール固有の性能」として一般化しないでください。 集団(高齢入院・全入院)、基準(conservative / liberal)、対照(GLIM / SGA)、読み方がそれぞれ違います。Allardの検討は筋肉量のデータがない条件でした。また、van Dronkelaarの対照はGLIM陽性(低栄養)であり、「GLIM陰性だが食べられていない患者」を拾えるかどうかを直接調べたものではありません。
| 出典 | 条件 | 位置づけ |
|---|---|---|
| GLIM 2019(病因基準) | 必要量の50%以下が1週間を超える(or 何らかの減少が2週間を超える) | 低栄養の診断の要素 |
| ESPEN 2021 推奨56 | 必要量の50%以下が3日 | 栄養リスクのある患者の介入の契機 |
| 当院 入口② | 必要量の60%未満が3日以上 | 低栄養リスクとして拾う(診断ではない) |
当院の線は、GLIMよりも早く、ESPEN推奨56よりも広く拾う設計です。60%という数値の根拠となる原典は、確認できていません(Lv3で扱います)。
(委員会提出版の内容。承認後に確定します。)
| 入口 | 条件 | 扱い | 記録 | 加算 |
|---|---|---|---|---|
| ① 低栄養 | GLIM陽性 | 介入(目標設定・経路・提案) | 別紙様式5 | 要件ア |
| ② 低栄養リスク | GLIM陰性だが、必要量の60%未満が3日以上 | 摂取量の是正と週1回の再評価。食欲不振の原因評価 | 簡略記録 | 要件エ |
②はカルテ上の確認と管理栄養士の対応で完結させ、記録は1行を基本とします。②が2週間続いた例、または体重が落ち始めた例は①へ移します。
| カウンター | 定義 | 何に効くか |
|---|---|---|
| 腸管未使用日数 | 経口・経腸から栄養として意味のある量が入っていない日数 | 腸管萎縮・bacterial translocation・経腸栄養の開始判断 |
| 目標未達日数 | 必要量の60%未満しか入っていない日数 | 栄養不足そのもの・静脈栄養の適応・GLIMの病因基準 |
入口②の「3日」は、目標未達日数のカウンターで数えます。
GFOのみ・白湯のみ・生食のみ・5%ブドウ糖のみの日も、腸管未使用に数えます。 これらは栄養にならないためです。
薬剤性・口腔・消化管・疼痛・精神認知・味覚亜鉛・食事内容形態・食事環境。②では、摂取量の是正とあわせて、この8つを確認します。
計画的な絶食中(絶食解除後に対象化)、集中治療室入室中、終末期で緩和ケア方針が確定した患者は、プロトコルの対象外です(除外の細部は委員会で確定)。「食べていない」ことがすべて入口②になるわけではありません。
| 職種 | やること |
|---|---|
| 病棟看護師・PT/OT/ST・薬剤師(気づく人) | 食べられていないことに気づく。摂取割合を記録する。管理栄養士・NSTに伝える |
| 管理栄養士 | 必要量を算定し(分母は実体重が原則)、目標到達率と目標未達日数を出して、入口②に該当するか判定する |
| NSTメンバー(医師・薬剤師・認定看護師・管理栄養士) | 食欲不振の原因を評価し、主治医に具体的な提案をする。「改善が見込める」という判断を記録する |
| 主治医 | 採用・一部採用・見送り(理由1行)を回答する。見送りは正式な選択肢 |
提案は、薬剤名・回数・開始日を含む、指示に落とせる粒度で書きます。
Q10 / 第2部 診断編 / 設計編
「GLIMを院内の低栄養基準の軸にしてよいか。前半のスクリーニングを、院内でどう決めるか。」
要件アの置き換え(決定01の5番目の根拠)
| 時期 | 栄養サポートチーム加算 要件ア |
|---|---|
| 令和4年度(2022年度)改定の要件まで | 「血中アルブミン値3.0 g/dL以下」(旧文言の全文は今回未確認) |
| 令和6年度(2024年度)改定 | 削除。GLIM基準による栄養評価で低栄養と判定された患者に置き換え |
| 令和8年度(2026年度)改定 | 維持。「栄養スクリーニングの結果を踏まえ、GLIM基準による栄養評価を行い、低栄養と判定された患者」(保医発0305第6号 別添1) |
制度は、栄養指標としてのアルブミンを要件から外し、スクリーニングと診断の2段階に置き換えた。置き換えの理由を述べた公式文書は今回確認できず。方向はJSPEN FAQ(アルブミン値でのスクリーニングは低栄養症例を見逃す可能性が少なくない)およびASPEN 2021と一致する。要件アの文言は「スクリーニングの結果を踏まえ」とあるがツール名は無い。結果をカルテに残すのが安全(本章の解釈)。令和6年度改定の概要(厚生労働省)は、回復期リハ病棟入院料1で入退院時の栄養評価にGLIMを用いることを要件とした(令和8年度での扱いは確認できず)。JSPENはスクリーニングを施設が選ぶとし、SGAは二重評価になるため推奨しない。国内ではSGAが広く使われている。
どのツールで拾うかで結果が変わる(集団依存。ツール固有の値として一般化しない)
| 報告 | 結果 |
|---|---|
| van Bokhorst-de van der Schueren 2014(SR 83研究32ツール) | "None of the tools performed consistently well" |
| van Dronkelaar 2023(高齢入院356例) | GLIMを対照に、5ツールの感度32〜68%・特異度61〜98%・kappa 0.21〜0.59(conservativeカットオフ) |
| Jazinaki 2024(入院290例) | NRS-2002→GLIMの2段階で低栄養41.4%、GLIM直接適用で48.6% |
5年更新も「スクリーニングツールの選択で低栄養の有病率が変わる」と明記している(確度B。今回の抄録では未確認)。
プロトコルv6 5-0-5は、現行ツールを確認し、日本病態栄養学会の栄養評価プロトコール、または既に定着しているツールに統一する方針である。まだ1つに固定されていない。 決める論点は次の5つ。
ツール名・採用体制はマスター表を参照する(本文には書かない)。
決定は委員会(医師・NST委員長)。管理栄養士・NSTはツール案と運用負荷の見積りを出す。個別患者への栄養治療の指示は主治医が出す。
Q11 / 第2部 診断編 / 設計編
「表現型(体重・BMI・筋肉量)の判定ルールを院内でどう固定するか。原典で確かな部分と、院内の決めに頼る部分はどこか?」
| 文書 | 体重減少・筋肉量の扱い | 性質 |
|---|---|---|
| GLIM 2019 / 2025更新 | 体重減少 >5% / 6か月以内、>10% / 6か月超。筋肉量は検証済み測定法。下腿周囲長 <33 / <32 cmの根拠は作業部会内の合意(2025更新Table 2の脚注e、確度B) | 合意報告。推奨グレードの表記は確認できず |
| ESPEN 2015基準(2017年用語GLで確認) | BMI <18.5、または体重減少と年齢別BMI低下、またはFFMI低下。2015原典は未読。GLIM 2019がその後の枠組み | 合意声明(2017年用語GLでの合意度 82%/85%)。2015基準自体は未読 |
| Academy/ASPEN 2012 | 6項目中2項目。体重減少は期間別の表(慢性疾患・重症: >5% / 1か月、>7.5% / 3か月、>10% / 6か月、>20% / 1年)。筋肉量・体脂肪・体液貯留・握力を含む。身長と体重は実測 | 推奨グレードなしの合意文書。ASPENはGLIMと並べて掲載し、置き換わってはいない |
Asia版BMI。 根拠文献の引用が原典に見当たらず、追加研究が必要と原典が断っている。Maeda 2020(最適BMI 17.0 / 17.8)は公表後の別研究で、院内死亡に対する最適値を求めたもの。診断用Asia値(<18.5 / <20)の根拠文献ではない。
境界値。 Table 3は「>5%」「>10%」、Table 4 Stage 1は「5-10%」「10-20%」。ちょうど5%、10%、BMI 20の扱いは、原典に明示が見当たらない。
下腿周囲長は3通り。 診断用 <33 / <32 cm(GLIM 2025。肥満補正は測定値から-3 cm / -7 cm)、重度判定用はJSPEN例示の27.0 / 26.0 cmとIshida 2025の29.8 / 28.2 cm(Q13)。診断用の値をアジア人集団で検証した報告は、確認できず。
AWGS。 GLIM 2025 Table 2のDXA・BIAの値は、AWGS 2019由来(<7 / <5.4、<7 / <5.7)。AWGS 2025との整合は確認できず。ALMI(DXA)の<5.5(女)はEWGSOP2確定版の値で、2019 Table 2の<6は暫定値だった。
体重減少の期間はツールで違う。 取り違えると判定が変わる。
| ツール | 体重減少の聞き方 |
|---|---|
| GLIM | >5% / 6か月以内、>10% / 6か月超 |
| MUST | 3〜6か月で <5% / 5-10% / >10% |
| NRS-2002 | >5%の減少が3か月 / 2か月 / 1か月のどれで起きたか |
| MNA-SF | 3か月 |
| MST | 減少量(kg)の聴取 |
確認できていないこと。 GLIM 2019最終印刷版(in-press版を読んだ)。2025更新の表(全文XML経由、確度B)。筋肉量ガイダンス(Barazzoni 2022)の本文。AWGS 2025原著。上腕周囲長のカットオフ。浮腫・腹水時のGLIM原典の規定。
院内で決める項目(v6は承認前の案):
| 論点 | v6の記載 | 決めること |
|---|---|---|
| 体重減少 | Table 3と一致 | ちょうど5.0%、10.0%の扱い。以前の体重の取り方と測定条件 |
| BMI | Asia列(<18.5 / <20)と一致 | 診断用と重度判定用(Q13)を、様式で別欄にする |
| 筋肉量の測定法 | 下腿周囲長。非麻痺側の最大周囲 | BIA、CT、DXAが使える場面の優先順位 |
| 筋肉量の値 | 数値の記載なし | 診断用 <33 / <32 cmと肥満補正を採るか。採るなら補正まで固定する |
| 浮腫・腹水 | 浮腫前体重 → CT → 判定保留 | 原典に規定がないなら「院内の決め」と書く |
必要量の分母のBMI 25以上の補正(プロトコル5-0)と、下腿周囲長のBMI 25-30の補正は別の話である。混同しない。
決める場はNST委員会。医師(委員長、プロトコル設計者)が基準案を決め、管理栄養士部門が測定手順を、看護部とリハビリ部門が測定の担当を決める。決定は様式と手順書に落とし、院内値には出典と決定日を付ける。
Q12 / 第2部 診断編 / 設計編
「病因2項目の判定ルールを院内でどう固定するか。原典で確かな線と、院内の決めに頼る線はどこか?」
| 文書 | 病因・アルブミンの扱い | 性質 |
|---|---|---|
| GLIM 2019 / 2025更新 | ④⑤の基準、CRPは補助、炎症の7声明。2025はアルブミンを低栄養の指標にすることに反対。④は標準化された評価法がなく検討中 | 合意報告。グレード表記は確認できず |
| ASPEN 2021 | アルブミン等は炎症を反映し、低栄養の指標に使わない。栄養リスクと関連 | ポジションペーパー。グレードなし |
| ESPEN 手術GL 2025 | アルブミンは "should not be used as a nutritional marker anymore"。高い代謝リスクの定義には使いうる | ガイドライン(原本直読) |
| 国際褥瘡GL 2019 | 予後には有用かもしれないが、栄養状態の指標としては推奨しない | 実施上の考慮事項。Level 5と専門家意見。独立した強い推奨ではない |
| ESPEN 病院栄養GL 2021 推奨56 | 栄養リスクのある患者で、必要量の50%以下が入院中3日続けば介入の契機 | グレードB / strong consensus 94.1% |
④の線。 2019 Table 3と2025 Table 5は「≤50%」だが、2025更新の本文は「<50%」と書く(同じ論文内の表記ゆれ)。表を基準とする。必要量の算定法は標準化されていない。2026年のDelphi案が「通常摂取量」に変えるが、採用は確認できず。「何らかの減少」の基準点と、「1週間超」が連続か累積かも、原典に明示がない(確認できず)。
CRPの3系統。 GLIM 2025は倍率(基準上限の10倍 / 連続超過)、JSPEN FAQは絶対値の帯、愛知医科大学病院の例は0.5 mg/dL。同じ「炎症あり」に3種類の線がある。 診断の線として固定せず、迷う例の補助として使う(声明5)。
⑤を満たす範囲。 原典は一過性の軽度炎症を除くが、「一過性」「軽度」の運用定義はなく、予定手術後の扱いも確認できず。線を狭めて有病率がどれだけ変わるかの実測も確認できなかった。過剰診断の懸念は論理上のものである。
★アルブミンの古い記載。 GLIM 2019本文3.7と、2019付録の他の枠組みの表(病因欄にアルブミン。GLIM自体は不採用)が残る。古い院内資料にも同じ記載がありうる。
ASPEN 2021の読み方。
確認できていないこと。 Cederholm/Jensen 2024(炎症)の本文。JSPEN FAQのCRP帯の根拠。GLIM 2019最終印刷版(in-press版を読んだ)。炎症基準自体の妥当性を検証した報告(探索していない)。認定NSTガイドブック2023 p.6。
院内で決める項目(v6は承認前の案):
| 論点 | v6の記載 | 決めること |
|---|---|---|
| ⑤の線 | 旧文「ほぼ自動的に満たす」→ 2026-10-06に改訂方針(一過性の軽度炎症は該当しない) | 「一過性の軽度炎症」の書き方。予定手術後や軽症急性疾患の扱い。根拠の記載欄 |
| CRPの位置 | 様式にCRP欄を追加。⑤の必須ではない | 迷う例で測る運用か。数値で使うならどの系統か。出典と基準上限を付ける |
| ④の分母と線 | 必要量(実体重ベース)。目標未達日数は60%未満 | 算定式の固定。60%と50%の関係。1週間の連続/累積 |
| 2026 Delphi | 記載なし | 摂取割合(対必要量)と通常摂取量の両方を残せる様式 |
| アルブミン | 別紙様式5でpreAlbをやめる提案 | 効果判定に使わない旨を手順書に明記。古い院内資料の差し替え |
| 判定の監査 | 記載なし | ⑤を満たした根拠の内訳を定期集計する |
★要確認: 当院の栄養管理計画書・NSTラウンド記録・電子カルテのテンプレートが、アルブミンを栄養指標として使っていないか。使っていればプロトコル導入時に同時に直す。
決める場はNST委員会。医師(委員長・設計者)が⑤の線とCRPの位置を、管理栄養士部門が必要量の算定式と摂取記録の手順を、看護部が摂取割合の記録を決め、医事課が要件アの記載を確認する。決定は様式と手順書に落とし、院内値には出典と決定日を付ける。基準は「標準」として置き、逸脱の自由を残す(強制すると現場との信頼が崩れる懸念がある。Q48)。
Q13 / 第2部 診断編 / 設計編
「なぜ体重減少を主軸にしたのか。それが自己申告に乗っていて大丈夫か。新しい研究値があるのになぜ使わないのか。」
Table 4にAsia行は無く、脚注bはさらなる研究が必要とする。2025更新でも同じ数値・同文(確度B)。ESPEN・ASPENの日本人向け重症度閾値: 確認できず。
(a) 主軸の理由と弱点
| 内容 | |
|---|---|
| 理由1 | アジア人に示されているのは体重減少だけ。BMIと筋肉量の重度値は原典に無い |
| 理由2 | BMI主軸だと、Table 3 AsiaとTable 4 Stage 2の同数値を必ず混同する |
| 理由3 | 体重減少は測定が1種類。BMIは身長も要り、筋肉量は測定法が複数ある |
| 弱点 | 率は基準時点の体重に、BMIは身長の申告に乗る。浮腫では下腿周囲長も使えず逃げ道が無い |
申告のずれやすさの一般論は出典未取得で断定しない。「測定が1種類」と「情報が正確」は別。精度ではなく記録で補う: 出どころ(実測値 / 本人申告 / 家族の記憶)があれば、後から読む人が重みを判断できる。
(b) 値の出典
(c) 院内値 vs 新しい研究値(下腿周囲長): 院内 男27.0 / 女26.0 cm、Ishida 2025 男29.8 / 女28.2 cm(日本5,173例、AUC 0.651 / 0.643)。AUC<0.7でどちらも高精度な線とは言いにくく、院内値は重度が少なく出る方向にずれる(評価)。補助なのでStageへの影響は限られる(評価)。Ishidaの参照基準は確認できず。
(d) 境界: ちょうど5%・10%・6か月は原典に明示なし(確認できず)。
決定02改訂版(2026-10-06): 体重減少 → 不明ならBMI → 下腿周囲長は補助。旧決定(BMI主軸)は、院内プロトコル案v6の設計に合わせて破棄した。
未決定の論点(委員会で決める)
| # | 論点 | 選択肢の例 |
|---|---|---|
| 1 | ちょうど5%・10%・6か月 | 原典どおり読む / 院内で定義 |
| 2 | 下腿周囲長の不等号(27.0 / 26.0を未満とするか) | 実施例の「<」 / 原著確認後に決める |
| 3 | 下腿周囲長の補助の使い方(Stageと食い違うとき、体重もBMIも不明のとき)、DXA・BIAの値、肥満補正 | 併記のみ / 上げる方向のみ / 別途定める |
| 4 | 体重減少は分かるが5%未満で、BMI等で診断した例。文言は「不明な例に限り」で、この例を覆っていない | この場合もBMIを使う / 使わない |
| 5 | テンプレートに「基準体重の出どころ」欄を足すか | 足す(推奨) / 備考欄 |
| 6 | 見直しの契機 | JSPEN改訂、GLIMのAsia行、自院データ、Ishida追試 |
NST委員会・医師が閾値の決定・変更・履歴保管。Lv2は決まった閾値の適用のみで、個別に動かさない。Lv1は聞き取りと出どころの記録、測定条件の遵守。
Q14 / 第2部 診断編 / 設計編
「入口を2本にする設計は妥当か。『必要量の60%未満が3日以上』という線をどう決め、要件エをどう運用するか。」
制度の骨格はLv2の表のとおりです(令和8年3月5日 保医発0305第6号 別添1。令和6年通知は令和8年5月31日で廃止)。設計上の要点は3つです。
国内の成書・GLが、GLIM陰性の摂取低下患者の扱いを定めているかは、確認できていません。
概念の根拠(ASPEN 2021)。 Evans DCらは、低栄養と栄養リスクを別の概念として扱うよう求め、アルブミンやプレアルブミンは栄養リスクと関連する炎症の指標であって、低栄養の指標ではないとしています(ポジションペーパー。推奨グレードなし)。
GLIMの更新。 2025年の5年更新は、食事摂取を含む閾値を変更せず、「risk of malnutrition」の合意定義がないとしています。2026年のDelphiは、スクリーニングの概念定義(Part 1: 専門家112名・46声明中26声明が採択)を進めましたが、特定ツールの指定の有無は確認できていません。同年の食事摂取のDelphi(Blaauw R, et al.)は、比較対象を「必要量」から「通常摂取量」に変える案を示しますが、正式改訂として採用済みかは確認できていません。
ESPEN 2021 推奨56。 栄養リスクのある患者で、必要量の50%以下が3日続いたら栄養介入の契機とする(グレードB・strong consensus 94.1%)。解説は、提供量の50%の摂取と死亡の増加(2〜8倍)との関連を示した nutritionDay の解析(16,290例・米国9,959例)を引いています(原著は未確認)。ESPEN自身が、56推奨のうち30は文献ではなく外挿・専門家の知見に基づくと述べています。
介入の効果(EFFORT試験)。 NRS 2002で3点以上、入院が4日を超えると見込まれる内科入院患者2,088例で、個別化した栄養サポートにより30日以内の有害転帰が減りました(23% vs 27%、調整OR 0.79、95%CI 0.64-0.97。Schuetz P, et al. Lancet 2019)。対象は非重症の内科患者で、リスクの定義はNRS 2002です。入口②の基準で拾った患者への効果を示したものではありません。
| 語 | 出典 | 定義の中身 |
|---|---|---|
| nutrition risk(栄養リスク) | ASPEN 2021 | 予後が悪くなる可能性。概念 |
| risk of malnutrition | GLIM | 合意定義がない(5年更新)。2026にDelphiで概念定義 |
| 低栄養リスク(入口②) | 院内プロトコル | 必要量の60%未満が3日以上という操作的定義 |
低栄養と栄養リスクを分ける構造は、入口①②の設計と同じです。しかし、確認した範囲では、ASPENの文書は摂取量60%・3日のような操作的な線を示していません。「ASPENが入口②の線を支持している」という書き方は誤りになります。支持できるのは、「低栄養と栄養リスクを別に扱う」という枠組みまでです。
| 出典 | 比較の対象 | 閾値 | 期間 |
|---|---|---|---|
| GLIM 2019(診断) | 必要量 | 50%以下 | 1週間を超える |
| ESPEN 2021 推奨56(介入の契機) | エネルギー必要量 | 50%以下 | 3日 |
| 院内 入口②(拾う線) | 必要量 | 60%未満 | 3日以上 |
| GLIM 2026 Delphi案(採用済みか確認できず) | 通常摂取量 | 50%以下(案) | 直近1週間(案) |
プロトコルは入口②を「簡略記録・ベッドサイドに行かない」運用にしています。一方、算定する患者には、栄養治療実施計画の作成と、患者等への説明・交付が要件にかかっています。簡略記録で「これに準じた計画」を満たすのか、②を算定するのか(臨床上の運用だけにとどめるのか)は、条文からは決められず、確認できていません。 医事課や所管の窓口に確認してから、②の記録様式を確定してください。
(委員会提出版の内容。承認後に確定します。)
入口①②の表は、Lv2の6-1と同じです(①GLIM陽性・要件ア・別紙様式5 / ②GLIM陰性で必要量の60%未満が3日以上・要件エ・簡略記録)。2つのカウンターは、同じ摂取データから別々の問いに答えます。腸管未使用日数は「腸を使っているか」、目標未達日数は「必要量に届いているか」です。静脈栄養で必要量を満たしていても、腸管未使用の問題は残ります。GFOのみ・白湯のみ・生食のみ・5%ブドウ糖のみの日を腸管未使用に数えるのは、これらが栄養にならないからです。
入口②は、院内のNSTラウンドの観察から設計されました。ラウンドで、必要量の60%に届かない状態が続いている例が複数見つかったことが出発点です。<!-- [院内版のみ] ラウンドの実測値(目標到達率60%未満の例数)はここに差し込む。公開版には書かない -->
プロトコルの文言は「GLIM陰性だが摂取低下が継続」です。GLIMはスクリーニング陽性の患者にだけ進むため、「スクリーニング陰性でGLIMに進まなかった患者」を②に含めるかは、文言からは読み取れません。含める解釈(摂取量そのものを入口にする)を推奨しますが、プロトコル上の明文化が要ります。
Lv3の役割は、院内の線を決めることと、要件エの運用を設計することです。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 線の値 | 60%・3日を維持するか。連続か累積か。比較対象を「必要量」のままにするか(2026 Delphiへの対応) |
| 判断の主体と記録 | 要件エの「改善が見込める」を誰が判断し、どこに理由を1行で残すか(提案テンプレートv2に理由欄がある) |
| ②の運用 | 管理栄養士主体で完結させる範囲、①へ移す条件(2週間継続・体重減少の開始) |
| 算定の可否 | ②を算定するか。栄養治療実施計画をどの様式で作り、誰がどう説明・交付するか(医事課に確認) |
| 評価指標 | ②の件数、②から①への移行率、提案採用率 |
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